時期が来たら

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時期が来たら

夕方、鈴木が学校を出て駅への道を歩き改札の所で足を止めた。 「崇……」 そこに久城が鈴木が来るのを待っていた。 「太郎、送るよ」 「……え?あ……ちょっと」 鈴木の手を引き、久城が駅の方ではなく、駐車場の方へ連れていく。 パーキングに停めていた車の助手席に鈴木を乗せると料金を支払い、車を出した。 鈴木はチラッと久城を見、相変わらず強引な所に動揺する。 「あの……今日はどうして学校に?」 「啓二が休憩時間に友達とふざけていて怪我をしてね。保健医から電話をもらってそれで……」 「え?!そんな時にこんな所に居ちゃダメじゃないか。付いていてあげないと。怪我の具合は?大丈夫なの?」 「腕を骨折して、当の本人は元気にしている。今は家政婦が家に居るからね」 「……家政婦。そう……」 鈴木はホッとした顔をした。そんな鈴木を見て久城はフッと笑う。 「俺からも質問していいか?」 「……え?」 「何を……されていた?」 鈴木は久城の質問に目を見開いた。 「体育教師……かな?彼に何をされていたんだ?」 【やっぱり見られてた?】 「何も……」 「嘘つき……だな」 鈴木は黙ったまま、窓の外を見る。 「相変わらず太郎は"同類"には思わせぶりだな。いつもノーマルな男性を好んで……そして傷つく」 【何が……言いたいの?】 「間宮……」 「え……?」 「いい男……だな?お前を"返してくれ"と言ったら"鈴木さんは物じゃない"と言われたよ」 「間宮くんが?」 「ああ」 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 『鈴木さんの"彼氏"は今は"俺"です。本部長は変わらず今のまま、鈴木さんの素敵な"元彼"で居て下さい』 『しかし、君は"ノーマル"で……』 『関係ないです"ノーマル"とか。俺は"鈴木さん"が好きなんですから』 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 「間宮くんが……そんな……事を?」 鈴木は間宮の顔を頭に浮かべ赤くなる。 「今はそれでいい。間宮と付き合えばいい」 「……え?」 「お前は分かっているんだろう?"ノーマル"な彼がいつまでも自分の傍に居てくれるとは限らない事を」 「……」 久城に考えたくない事を言い当てられる。 「そのうち世間体を考えだし、彼は時期が来たら女性の元へ行くだろう。まさに俺がそうしたように」 久城の言葉に動揺する鈴木の手に久城がその手を重ねた。 鈴木がハッとして久城の顔を見るとその目が「今までお前の恋愛がそうだったじゃないか」と言っている。 鈴木はその手を引っ込め、久城はそんな鈴木にフッと笑った。
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