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お見合い
鈴木が部屋の鍵を開けて腕時計を見るとまだ18時30分。少し考えて再び声を掛けた。
「多分、間宮くんは19時くらいまで戻られませんよ?もし良かったらうちで待たれませんか?」
「え……。いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
間宮父を部屋へ招き入れると鈴木はお茶菓子を用意し、コーヒーを入れる。
そしてそれを間宮父の前に置いた。
「何だかすみませんね。壮太には連絡したんですが急に来てしまったもので」
「いえいえ。多分、間宮くん営業だからなかなか帰れないのかも知れません」
「……」
沈黙に鈴木はついでしゃばってしまったと後悔する。
ここで間宮の夕飯まで作っていると知れば、きっと変に思われると今日は作るのを止めた。
コーヒーを飲んでいる間宮父を見て、間宮に本当によく似ていて鈴木は微笑む。間宮が良い家庭で育ったのが間宮父を見ていて見てとれた。
あまりジロジロ見るのもと鈴木は視線を落としコーヒーを口にする。
「鈴木さんに聞くのも何なのですが、アイツにその……付き合っている女性等はおりますでしょうか?」
鈴木はその質問にドキッとする。
「自分です」とは答えられる訳もなく「多分いないんじゃないかなぁ」と無難に答えた。
「実は今回来たのは、いい縁談がありまして。その事で来たんです」
鈴木は一瞬目を見開く……が、直ぐに平静を保った。
「……そうですか」
鈴木の心臓は早鐘のように鳴る。
【間宮くんがお見合い……】
「ええ、知り合いの親戚のお嬢さんでね?年齢も近いですし、どうだろうと話を頂いたんですよ」
そう言って風呂敷包みから写真を取り出し眺めている。
鈴木もその写真を見せてもらうとそこには着物を来た肩くらいの髪の線の細い細身の可愛らしい女性が微笑んでいるーーー
着物なので間宮好みの巨乳かどうかは分からなかったが、自分よりは断然に胸もありそうだった。
おまけに色も白く、きめの細かい女性特有の柔らかそうな肌。
「可愛らしい方ですね。間宮くんに凄くお似合いだ」
「でしょう?上の2人は早々に結婚をして片付いてはいるんですがね?アイツはどうも末っ子のせいかのんびりしてまして……」
「間宮くん……モテるからなぁ。きっと本人次第で直ぐにお相手は出来そうです」
「そう……ですか?」
「ええ」
鈴木は間宮父に微笑みながら住宅展示会での間宮と菜々子を思い返した。
「いいご縁になるといいですね?」
「ありがとうございます」
そう言っているとカネの階段を駆け上がる音が聞こえてきた。
「あ……きっと間宮くんですよ?」
玄関の前で待っているはずの父親が居ないので「あれ?」と言っているのが聞こえる。
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