ありがとう

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ありがとう

鈴木が目を覚ますと自室の天井が見えた。何があったのかを考える。 「ああ、矢野くんに殴られて……」 そう思った時に誰かに手を握られている事に気がついた。 「間……宮くん?どうして?」 起き上がろうとするが、腹の痛みに再びドサッと寝転んだ。 そんな鈴木に気がついて眠っていた間宮が鈴木の顔を覗き込む。 「鈴木さん、大丈夫?ずっと意識が無くて心配したよ」 「悪かったね。もう……大丈夫だよ」 「嘘つかないで下さい。直ぐそうやっては平気なフリをする」 「……。あ、お父様は?」 「俺の部屋で休ませてる」 「……そうなんだね」 「うん……」 鈴木は痛む腹にフゥと息を吐く。 「喉、乾いてない?何か飲む?」 そう言うと間宮は立ち上がった。 「矢野は親父が警察に引き渡したからもう心配いらないよ」 「お父様が?」 「うちの親父、元警察官。……田舎のだけどね。ついでに上の兄貴2人も警察官で奥さんも元婦人警官の警察一家」 「……そうなんだ?」 「そして俺だけ営業マン」 振り返る間宮に鈴木は微笑む。 それだけで間宮が周りに振り回されずに今まで自分の人生を自分で切り開きいろいろ考えて決めてきた事が分かる。 そんな間宮の事を心配する父親の気持ちも鈴木にはよく分かった。 ミネラルウォーターの入ったグラスにストローを刺して鈴木の傍に置くと、間宮は自分の太腿に鈴木を凭れかけさせ、カサついた鈴木の唇にストローを咥えさせるとゴクンと何度か喉仏が動いた。 「ありがとう……」 「お腹すいてない?伸びたカップラーメンが手が付けられてない状態であったけど……」 「大丈夫」 間宮は再び鈴木の傍に胡座をかいて座るとその手をとった。 「お見合い……するんだってね?」 「ああ、それならもう……」 「可愛らしい女性だった。きっといい奥さんになられるのだろうな」 「鈴木さん……」 鈴木は間宮の顔を見てフッと笑った。 「間宮くん、僕の事はいいからね?どうか……幸せになってね。今までありがとう」 「……」 間宮はハァと溜息をついた。 「何でそうなるんです?」 「……え?」 「誰がお見合いするって言いました?」 「……でも」 「でも?」 「……」 鈴木が黙り込むと間宮が少し怒ったように鈴木の顔を覗き込む。 「何で付き合っている人が居るのにお見合いしたりするんですか。そんなの相手にも悪いしおかしいでしょう?」 「でもお父様が……」 「親父にはもう言ったよ。鈴木さんとの事。それに俺の大事な人だって」 【え……?】 「だ、ダメ。ダメだよ、そんなのっ」 鈴木が起き上がろうとして痛みに蹲る。 「す……鈴木さんっ」
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