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《☓☓☓side》
首に絡みついたまま貪るように唇をつけるこの娘は、無意識なんだろうな。
だから、言っただろう。
君はもう変化しているんだよ結衣。
これで、一人で生きていく発言ねぇ。
事がわかってしまうが。
前は、まだ変化はしてはいたが、ここまででは無かった。
しかし、本人はわかっているのか。
唇に唇をつける行為。
さっきはわざと見せつけたんだが。
まあ、俺はそれ以上の経験はあるから平気なんだけど。
結衣は明らかに無いだろう。
まったく、怒るのかと思ったら、予想外にびっくりしている。
さすが、あの男の血を受け継いでいるわけだ。
恐ろしいな、純血は。
しかし、あの視線。
何が目的なんだろうな。
結衣が噂の人かそうでないかの確認か?
それとも別の意味があるのか。
俺が知りたいのは別にあるが、まさか、まだ終わっていないのか?
あの問題は。
少し身動きした結衣は、やがて俺から離れる。
金色に瞳を光らせて唇をぺろりと舐めた。
どうでも、いいが、惚けた顔で俺を見るのはやめろ。
自覚はないんだろうな、この鈍感娘。
小さい頃は可愛かったんだけどな。
本当に純粋で無邪気で。
今の本人の表情を見て顔を顰めた。
まったく。これだから。
この先の言葉は飲み込んだ。
相変わらずの惚けた顔の本人に問いかける。
「美味しかったか?」
と聞けば妖艶に微笑んだ。
《☓☓☓side終わり》
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