油断

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…………ん? 気のせいかな。 何か聞こえた気がしたんだけど。 首を傾けながら辺りを見渡す。 何気なく鏡に映る自分を見る。 何処にでもいる女の子、と言っていいのかわからないけど、どう見ても高校生だよね。 まあ、何年経っているかは忘れたけど。 本当に時が止まったまま時間だけが過ぎていった自称高校生の女の子。 さて、冗談は置いといて。 準備をしなくては。 今日は、あの男はいないし、たまには羽目を外してもいいよね。 なにせ、自分と似たような人は世の中に三人いると言われているもの。 昔の水無月結衣は行方不明。 今も探しているかはわからないけど、両親は。 ふと昔の事を思い出しそうになり、振り払うように首を振った。 この選択をしたのは私。 誰でもないし、あのお姫様の為でもない。 まあ絶対に言わないけど、今でも感情があるのよね。 あの男に対しての感情が。 やっぱり初恋ってのは消えないらしい。 だからといって、あの男と関係になりたいのかと問われれば複雑なものがある。 あの男だって絶対に間違いは犯さない。 何しろ、時々私を見る目が語っているもの。 軽く息を吐き、濡れた髪を乾かす。 さて、いつも三つ編みだし、久しぶりにラフな髪型にしようかな。 まあ、腰まである髪なんて滅多に見ないだろうけど。 たまには息抜きをしたいもの。 なんでもかんでも俺様な人に合わしたくないしね。 櫛を使い丁寧に髪を整える。 さてと。 近くに置いてあった衣類を身に着けて、洗うべき物を手に取り浴室を出る。 洗面所近くにある洗濯籠へ入れて、台所へと歩いて行った。 「今日は何にしよう。」 休みだからゆっくり出来ると思っていたんだけど困った。 うーん、いちおうクレープは食べる約束をしているから軽く口に入れよう。 冷蔵庫を開いた時に目についたのが、真っ赤な色をした飲み物がある。 …………なんてわかりやすい。 いや、そもそも前から冷蔵庫とかの家電製品もあるんだろうか。 確かに、私は人間でもあり吸血鬼でもあるけど。 よく、あの方が許可をしたわよね。 アンドレラ国王様ですよね。 あの男が聞いたら恐ろしい事になりそうだから質問しにくい。 まあ、あの世界は私が嫌いらしいので無理は無いけど。
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