あの男との駆け引き

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前にされたことがあったけど、相変わらず慣れない。 いや、慣れる人がいたら聞いてみたいものだ。 鋭い牙が首元に刺してくる。 もともと注射嫌いな私。 あれより鋭い?かも。 ときどき甘ったるい血のニオイが私の中の本能が欲しがる。 ……………私にも頂戴と。 痛さに身をよじれば離さないように、がっちり身体を掴んでいるし、何より首に息がかかり、鋭い牙が容赦なく突き刺さる。 痛い、痛いってば!! なんて思っているうちに、終えたのかゆっくりあの男は離れた。 「………………やっぱり美味しいな。人間と吸血鬼の血が混ざっているのはヤミつきになる。」 にやりと妖艶に笑った。 滴る血を唇の端に少しだけ残っているけど。 慣れない笑顔に石のように固まる。 「なに、欲しいの?そうだよな、君も吸血鬼だからな。」 いいよ、あげようか? へ? 俺の血を飲めば少しはわかるだろう、いろんな事にな? なんて言ったあの男は、何故か自分の手首に指を当ててなぞるように滑らす。 すると、ぽたりぽたり、落ちていく血の滴が落ちていく。 「さあ、宿題の前にお腹が空いたら意味が無い。」 ごくりと血の滴を見た私を見て黒い笑みを浮かべた。 あの男は、顔を上へ向けて口を開ける。 手首から流れる血を美味しそうに飲み始めた。 「ほら。美味しいぞ?遠慮はいらない。」 「え?」 ふわりとニオイのする甘いニオイに、無意識にぺろりと唇を舐めていたのは知らなかった。 そんな私を見て、あの男が更に黒い笑みを浮かべている。 「結衣、おいで?欲しいだろ?」 魅了するような蕩ける声に、私の思考は飛んでいく。 無意識に身体を動かしてあの男へ歩いていく。
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