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まだ北国でも残暑が幅をきかせていた、長月の夜。
わたしは「それ」が来る3秒くらい前に、ふっと目が覚めた。部屋の中は闇で満たされている。眠りに落ちる直前となんら変わりない光景だった。
ただし少し違っていたことは、いつも就寝時に付けっ放しにしているラジオから、警告音とともに、無機質な自動音声が流れていたことである。
<緊急地震速報です。地震が発生しました。強い揺れに警戒してください。車を運転中の方は、ハザードランプをつけて、周囲に注意して、ゆっくり、スピードを落としてください。屋内にいる方は……>
へ?
刹那、地鳴りのような音とともに、揺れが襲ってきた。テレビ台の上の液晶テレビが、ペラッペラの紙みたいに震えている。ここまで大きな地震に遭遇するのは小さい頃以来で、さすがのわたしも恐怖を感じざるを得なかった。
「……ん? なんだ、地震か?」
隣で寝ていた彼は今更目を覚ましたみたいで、まだ瞼が半分くらい閉じたままだ。体感的に震度にしたら5くらいはあってもおかしくないのに、わたしがいつも朝に揺り動かして起こすときと同じくらいの目覚め方。そこまでして寝たいかね。死んじゃうよ、いざという時。
って言うか、今がまさに、いざという時だろうが!
そんなふうに口を開けず、わたしは揺れがおさまるまで彼にしがみついたまま、ひたすらに耐えた。
2018年9月6日。
北海道胆振東部地震。
なんの前触れもなく、突然に、それは訪れた。
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