朝ぼらけ

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 澄み切った秋の空は、淡い絵の具に覆われていた。  東急田園都市線二子玉川駅は浴衣を身に纏った人々で溢れかえっており、地面を滑る下駄の音がカランコロンと鳴り響く。 「金魚の浴衣、似合ってるね」  隣を歩く友人は、真っ赤なルージュを三日月の形にして微笑む。彼女は高校時代の野暮ったさを微塵も感じさせない、優美な蝶へと姿を変えていた。  二子玉川緑地運動場へと足を踏み入れると、芝生が爪先を擽る。こしょばい感覚に背中を捩らせながらも、空きスペースを見つけた私達はレジャーシートを敷いて緩やかに腰掛けた。 「……え、待って。葉月(はづき)先生がいるんだけど!」  乾いた喉を潤そうとペットボトルのキャップを開けた瞬間、友人が発した言葉に思わず視線が揺れ動く。  彼女が真っ直ぐ指し示す方を辿ると、数メートル先に高校時代の恩師が長い手足を持て余しながら、ゆるりと歩いていた。  3年経った今でも変わらないその姿をじっと食い入るように見つめる。
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