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未来の約束
日も暮れ、夜になった。
カイはルリアーナに向けて発つ準備をする。ルイスから仕向けられた間諜は、レナによれば見張りに呪術の籠った宝石を持たせたので安全らしい。
(とうとうか。まさかルイス王子のところに向かうことになるとはな……)
カイはルイスを思い出す。
ルイスがレナを前にした時にどんな反応をするのか想像がつかなかった。
ブリステ側に間諜を手配する程度には、冷酷に物事を判断するようになっているのだろう。
「明日からは、馬で向かうの?」
テントの中でレナに尋ねられて、カイは我に返った。
「ああ、途中までは馬で動こう。移動時間がかかりすぎる」
「ポテンシアを抜けて、ルリアーナに入るのね。国境の町で、アウルに寄るのは難しい?」
「難しくはないが……、止めておいた方がいい」
「?」
「俺たちは、ポテンシアに住む一般人にとっては好まざる客だ」
「……侵略者だから?」
「今は、ポテンシアの敵だ」
カイがそう言ったのをレナは悲しそうに聞いていた。
一時期ポテンシアで過ごしていたレナにとって、その事実は決して軽くない。
「立ち寄る場所は、ロキの資本が入っている宿など限られたところにしていくつもりだ。こちらにあの青年実業家がいるのは都合が良かったな」
カイが淡々と説明するが、レナはまだ事実を割り切れていないような様子で黙っている。
「レナが勝ち取りたい平穏が、きっと次の機会を運んでくれるはずだ。それまでの辛抱と行こう」
カイは隣に座るレナの、顔に掛かっていた髪を掻き上げて唇を重ねた。
レナはいつも通りその行為を受け取っていたが、突然何かのスイッチが入ったようにそのまま体重をかけてカイを押し倒す。カイは『気』が足りず、集中しなければ思うように力が入らないのだ。
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