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(?!)
カイは混乱から状況が把握できない。
テントの中で横になって上に乗られているだけでなく、口は塞がれたままだ。
普段であればレナを軽々と持ち上げることも態勢を変えることも可能なのが、『気』を失っているカイは、集中しなければ身体が上手く動かせない。
動揺から集中などできず、されるがままになっていた。
(待て、待て……! どうした?!)
暫く身体がまともに動かせなかったのを、意識を何とか保ち、カイはレナの肩を掴んで引きはがす。
「……はっ……どうした……? 急に……」
息も絶え絶えで、意識が遠のきそうだった。カイには全く余裕がない。
「これからみんなで移動をするから、二人きりでいられる時間も無くなるんでしょ?」
「ああ、まあ……そうかもしれないな」
「だから今だけは、我慢しない方がいいのかと思って」
カイは言葉を失った。我慢をしないとは? と頭が真っ白になる。
「いや、今、身体が思うように動かないんだ……」
「知ってるわ。だから、私がこうして……」
「待て、本当に待て」
カイが焦っていると、レナの身体が震えだす。
「ふ……うぅ……」
かろうじて漏れるような声に、レナの小さな泣き声が混じる。
一体どうしたのか、カイは理解ができない。
「不安なの……。この先の事も、あなたとの、未来も……」
「ああ、それは、そうだろう」
倒れたままのカイはレナを引き寄せて自分の上に腹ばいにさせると、いつもように抱きしめて頭を撫でた。
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