未来の約束

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「あんな風にされたら理性が飛んでしまうものだ、普通は」 「……そうなの?」 レナは首を傾げている。 「普段の体調だったら、耐えられなかったかもしれない」 「私、そんなあなたも見てみたいのに」 「夫婦になったら、いくらでも見せてやるから安心しろ」 カイはそう言うとレナを引き寄せて唇を重ねた。 たった一度、軽く触れるだけに留めると「これ以上はやめておこう」と小さく言って困った顔を浮かべる。 「俄然、あなたと夫婦にならなきゃって思ったわ」 「残念ながら、ずっと俺はそう思って耐えている。その重さが分からないだろうがな」 カイはそう言うとレナの頬を軽くつねった。レナは不本意そうに一旦顔をしかめたが、思い直したように吹き出した。 「何がおかしい?」 「夫婦になったら……って未来に、カイの理性が関わってるなんて変なの」 「人の気も知らないで、よく笑えるな……」 レナが楽しそうに言うのを、カイはうんざりしたように見つめる。 無垢であることはレナの魅力でもあるが、もはやただの拷問でしかない。 この地獄の終わりが来るのか一抹の不安がよぎってしまったが、考えることはやめた。 「共に在ろうと、約束をしたからな」 カイは諦めたように小さく笑う。 ふと、脇に置いていた明日の出発準備が目に入った。もう、前に向かって進むしかない。 「何があっても、大丈夫よ」 すぐ側でレナがそう言って嬉しそうに微笑んだ。呪文のようなその言葉を聞くとカイは妙に納得するのだ。 「愛している」 カイはそっとレナの頬に唇で触れた。 「何があっても貫く覚悟だ」 耳元で囁かれると、レナは胸の奥がきゅうっと音を立てるように苦しくなる。 理性で抑えているということは、少なくとも求められてはいるらしい。 いつも自分ばかりが焦ってしまうことに申し訳なくなりながら、レナは初めて知った事実に心の中が騒がしくなっていた。
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