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少数道中嫉心と共に
夜が明け、まだ日が昇りきる前に4人は出発の準備を終えた。兵士の中に紛れていた間諜をあぶりだしたことで、マルセルもカイの交渉に折れて4人の出発を見送っている。
「この争いを侵略以外の形で終わらせてみたい。何が正解かは、分からないが」
「そうか。まあ、健闘を祈るよ」
カイはマルセルと軽い会話を交わすと、お互い口元だけで笑った。カイはすぐにレナを乗せて愛馬のクロノスで旅立ち、マルセルはカイに背を向けて自分のテントに戻って行く。
「行くぞ」
カイが声を掛けるとシンとロキもカイに続く。カイはまだ身体が万全ではなかった。
「どこまで行くの?」
「情報を取りながら進む。ルリアーナを目指しながら」
「力はまだ入りきらないんでしょ? 大丈夫?」
「普通だったら難しいが、クロノスとは意思疎通が図れる」
カイとレナが密着してそんな話をしている間、その様子を後ろで見ているロキが苦々しい目を2人に向けていた。
「どうした、まさかあの姿が想像できなかったのか?」
「想像できてたんだけど、実際見ると想像以上にむかつくんだよ」
シンとロキはそんな話をしながらカイ達の後ろに続いていたが、この先の事を考えると気持ちが沈む。
「彼女をルイス王子のところに行かせるのは……やっぱり反対だよ」
「まあ、これまでの流れからして穏やかじゃないよな」
「情報も集まって来てるけど、ルイス王子はかなり合理的な判断をする人みたいだよ。死んだ人間が現れたなんてこちらから情報を渡してでもしたら、質の悪い悪戯だって切り捨てられそうな雰囲気だ」
ロキの言葉に、シンは確かになと短い息を吐いた。
自分がルイスだったとしたら……そんな悪戯が存在すると思っただけでおぞましいのは間違いない。
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