夜は更けて

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「団長、お酒の席でくらい、いいんじゃないですか?」 シンに声を掛けられて「こういうことでは敵わないな」とカイは口元を緩めた。 「もう、レナを過去に戻すのは嫌だ。今の彼女を見ていると――。 王女だった頃のレナは孤独すぎた。平民として何にも縛られずに周囲から愛されて天真爛漫に生きる彼女が、幸せそうで……」 「平民のままならこのまま結婚できちゃいそうだもんねえ。それが、王女だったとなったら、そう簡単にはいかないだろうな」 ロキは短い息を吐いた。カイの隣で頬を染めるレナは、間違いなく今が幸せだろうと分かる。 「レナ様がルイス王子を目指そうとする理由は何なんですか?」 シンは純粋な興味で尋ねる。カイはレナの様子を思い出しながら、言いづらそうに口を開いた。 「恐らく、ルイス王子を救いたいんだろう。間違いなく、レナを失って正気でなくなっているのは間違いない。レナは、自分なら……救えるのだろうと、漠然と分かっているような気がする」 カイの口元が固くなり、目に憂いが浮かんだ。シンは黙って頷いている。 「ああ、あの人、そういうとこ、あるよね」 ロキもポツリとそう言うと顔を曇らせた。これまでロキが見て来たレナ・ルリアーナは、他人の犠牲を許さず、自分を犠牲にするところがあった。 「やだなあ……。そんなの。もっと利己的に生きて、自分のためだけに笑っててくれたらいいのに」 ロキが独り言のように苦痛に顔を歪ませながら呟く。 「間違いないな。でも、それはもうレナではない」 ブランデーをひと口含んだカイはグラスを額に付けながら祈るように言った。
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