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敵か味方か
ロキの経営する宿で朝を迎えると、それぞれに身支度をして食堂に向かう。
カイが廊下に出ると、それを待っていたかのように隣の扉が開いた。
「ああ、おはよう」
カイが声を掛けるとレナが慌てていたので、「焦らなくていい」とカイは穏やかに言ってその場に留まる。レナは部屋に鍵をかけると小走りで近付いてカイの腕にしがみついた。
「おはよう」
レナが嬉しそうに言うと、すぐ後ろにいたシンとロキは苦笑いを浮かべる。
「空気だなあ……俺たち」
「気分悪いよねえ、朝から」
そんな会話をしながら食堂に着くと、ロキの姿を目に入れた従業員に廊下から別の場所に案内される。4人は個室に通された。
「人の目に触れないように過ごせるのは流石だな」
「まあね。有名人ほど、人目を避けて滞在したいものなんだよ」
個室には6人掛けのテーブルがあり、カイとレナが扉から離れた上座に着く。ロキがすかさずレナの正面に座ったので、カイが明らかに嫌そうな顔を向けた。
「さて、現状なんだけど……。実はルイス様が出兵するってのは確実な情報らしい。そして、大分怪しい情報が入った」
ロキの話を聞きながら、それぞれに食事をしながら息を呑む。
レナはパンを持ったまま緊張していたが、カイは耳を傾けながらもマイペースに食事を続けていた。スープを掬いながら、視線すら向けていない。
「こちらにコンタクトを取りたがっている人間が現れたよ。さて、何ていう名前を名乗ってると思う?」
ロキが正面に座るレナをじっと見つめて尋ねる。レナは自分の知っている人だろうかとドキリとして食事の手が止まったままだ。
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