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「あの間諜からナイフが飛んで来たらまずいね」
「ナイフくらいなら、急所を外せば死にはしない」
「刺される前提で会いに行くの嫌なんですけど……」
3人が馬上でそんな会話をしている間、レナは何かを考え込んでいた。
「やけに大人しいな。何か思うことがあれば、口を挟んでくれてもいいんだぞ」
カイが自分の目の前で密着してクロノスに乗っているレナに声を掛ける。
「え? 思うこと?」
まだ意識が考え事から戻って来ていないようで、レナは受け答えもうまくできていなかった。
「何か気になることでもあるのか?」
カイに尋ねられて、レナは後ろを振り向いてカイを見上げる。
「レオナルドは、なんでロキが動いてるって思ったのかしらって……。ロキの事なんて、ポテンシア国王が調べることはなさそうでしょ?」
「ああ、そういうことか。確かに、うちの騎士団にコンタクトを取って来るのであれば俺に何か用事があるのかと思うが、あえてロキに行ったのは謎だな」
横並びで進んでいたロキは、その会話を聞きながら暫く唸っていた。
「俺、王女殿下の訃報が出てから、調査員いっぱい潜伏させてたから……それでかな?」
「……なるほど、それはあり得るな」
「もしかすると、うちの会社が王女を保護しているかどうか、確かめようとしたとか?」
「……何のためだ」
「国王からしたら、ルイス王子の牙城を崩せるかもしれないだろ」
4人はそれぞれにレオナルドの狙いを考えてみたが、あの間諜の真の狙いなど到底分からないという結論に至った。
「こんなに会うのに気が進まない人間もそういないよ」
ロキは溜息をついて憂鬱そうな顔を隠していない。シンはいつもの穏やかな表情を崩していなかったが、概ねロキの意見に賛成のようだった。
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