人生で関わりたくない男

2/2
前へ
/579ページ
次へ
「ねえ、カイ。気分転換に、街を歩かない?」 全員が静かになったところで、急にレナが口を開く。 こんな時にこそ、部屋で考えていても仕方がないかもしれない。 「そうだな……」 カイが席から立ち上がると、すかさず、 「俺も行く」 とロキが当然のように言った。 「……街を歩くというのは、みんなでワイワイすることじゃないぞ」 「ここで2人っきりになって浮かれられたら、あの間諜に刺されかねないと思ってさ」 「……」 レナは恥ずかしそうに俯いていた。すぐに態度に出てしまうらしい。 「それに、今のカイ・ハウザーは普段とは違う」 「それはそうだが……」 「ロキが行くなら俺も行きますよ」 結局、4人での外出が決定した。 ぞろぞろと個室を出て飲食店を後にする。ロキの本社のある街に比べたら人は少ないが、人通りは途切れない程度にある。 でこぼことした石畳の敷かれた道は、徒歩の足には優しくない。時折つまずきそうになりながら歩くレナを、カイが咄嗟に支えた。 「歩きづらそうだな」 「こういう道は、慣れていないのもあるわね」 レナが困ったように笑う。カイはなるべく急がせないように歩幅を狭めてゆっくりと歩いた。 「ご無事でなによりですね」 不意にレナの後ろで声がする。その場に緊張が走った。 カイ、シン、ロキの3人は素早く振り向き、その人物を捉える。 何事だろうとレナもゆっくり後ろを向いた。 「お久しぶりです。僕の妹ってことになってるんでしたっけ?」 そこには、目の奥が笑っていない笑顔を貼り付けた、あの男が立っていた。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

153人が本棚に入れています
本棚に追加