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油断はできない
「レオナルド!」
最初に大きな声を上げたレナは、ただ驚いてその姿を見つめていた。
「あなたのお陰で……」
「狙いは何だ!」
緊張感のないレナとは対照的に、カイは必死にレナを背に隠し、ロキは思い切り殺気を出してレオナルドを睨む。
「やだなあ。そこの妹の恩人に対して」
「お前が裏のない行動をとるとは思えないからな」
カイの背に隠されたレナは、それでもレオナルドの方を見ようとカイの脇から顔を出した。
「相変わらず可愛いな、妹は」
「お前の実の妹じゃないだろう」
相変わらずの笑顔で話すレオナルドに、カイは探るように会話をする。
「僕、ポテンシアの戸籍にエレナ・サントーロって妹を入れておいたんですよ」
「……ってことは、ゆくゆくは団長のお義兄様になるんですかね……」
シンがレオナルドの言葉に反応した。
「何……? あれが義兄だと……?」
カイとロキが愕然している。レオナルドにレナの兄らしい要素はどこにもないが、籍と言われると反論できない。
「冗談ですよ」
(殺してやりたい、もう、今すぐにでも)
笑えない冗談を言って例の笑顔を見せるレオナルドに、ロキは本気で殺意が湧いた。無意識に自身の剣を抜きかけている。
カイは受けたダメージから立ち直れず、その場でしゃがんで項垂れていた。レナはそんなカイを不思議そうに眺めている。
「で? 俺たちはレオナルドがロキに接触してきた理由が知りたい」
カイとロキに比べダメージを受けていないシンが冷静に尋ねると、レオナルドはくすりと笑った。
「僕の妹のことを好きで必死に探していた金持ちが、急に妹を探さなくなったってことから……匿っている可能性が高いと読んだんですよ」
「……そういうことか」
シンが納得していると、ロキは冷静になり抜きかけた剣を元に戻した。
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