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いわゆる、普通な出会いをした私たちは、夏の訪れとともに次第に意識するようになった。
憧れを重ね、静かに確実に思いを連ねていく。彼が好きといったものが片っ端から素敵に見える。こんなにも真っすぐな思いを人に向けて持つとは自分でも思ってもみなかった。彼の笑顔が、夢中になる姿が、私の持っている悩みがどれだけ小さなものか教えてくれた。
そんな彼を特別だと思い始めていた。根拠のない微熱。どうひねり出しても当てはまる言葉はないが、確証のない自信があった。他の人とは違う、私を内側から熱くする感覚だった。
…でも彼は海面を揺らしてしまったのだ。
感じ取れた「特別」のほとぼりが酷く安いもののように感じ取れて、すぐさま冷えていく。体現できない莫大な時間が彼の体には流れている。私の自身のアイデンティティをかっさらい、生きる意味を明確にした憎くてたまらないこの血が、彼にも流れている。私たちの出会いはその血が引き合わせたものだったのだ。
今日中に、私はこのことを伝えねばならない。絶対に。でなきゃ二度と機会は訪れない気がした。
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