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0.おばあちゃん、ひとりごちる
庭の木を見上げながら、もうすぐかしら、と考える。
「私の人生の幕引きも、もうすぐかしらねぇ。」
と、今度は声に出して言ってみる。
すっかり皺だらけになった手をこすり合わせながら、フッと微笑む。
子どものころから、美人だ、小町だと言われてきたけれど、こうやってシワシワになってからの自分のほうが、私は好き。
あの人の絵のモデルになって、恋をして、奥様公認でお世話になるようになって、毎週木曜日に会えるのを楽しみにして。
清二が生まれて、この家をいただいて、清二の反抗期が来て、いつの間にか大人になって、巣立っていって。
典子さんを紹介されて、2人が新居を構えて、洋介と遥が生まれて。あの人が亡くなって。
そこから大分、時間が経って。それでも私は、今も毎日楽しくて。
うん、ありがたいほど幸せな人生。もうそろそろでも、構わないわねぇ。
気になることと言えば、一つだけ。
遥。可愛い、はるちゃん。
あの子だけは、旅立つ前にどうにかしてあげたいわねぇ。
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