母の処方箋

　幼少期？　そりゃあもう、あたくしが言うのもおかしいようですが、親の欲目を抜きましてもなんともかわいいかわいい息子でございました。男児の割に言葉がはやく、四歳ごろにはよく大人に混じっていっぱしの口を利きましたっけね。そうそ、一人前の大人の顔で友達のお母さんに「でもそれはおばさんが悪いんじゃないかなあ。タクヤくんがスコップ取っても、怒らないんだもの」なんて理路整然と！　申し上げるもんですから、お母さんたちも鼻白んでしまって。末は議員か弁護士か、なんて言われておりましたのよ、ほほほほほ。

　小学校の時にも神童っぷりは相変わらずで、常に学年トップの成績でございました。ただちょっと体育だけは、あまり得意ではございませんでしたけれども。この頃にはあたくしもこの子のデキによくよく気づいておりまして、なんとしてでも東大に行ってもらわなくちゃと夫を説得して塾に通わせ、中学受験に奮闘いたしました。