とある殺人犯の独白

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 ぼくは3才から高校を卒業するまでの15年間、ど田舎の山奥で育ちました。もともとは東京だったらしいですけどね。ぼくにはその頃の記憶はないので、気付いたら山奥に住んでたって感じです。  ご近所はぼくの家から1キロ近く離れた場所にあってね、今となってはそれのどこが近所だよって思いますけど、その頃のぼくにはそれが普通でしたから「お隣さんに野菜持っていって」って母に頼まれては、山道を20分くらいかけて野菜を届けに行ったりもしました。  街灯なんてものはないですから、夜になると、もう本当に真っ暗闇で……だから日暮れ近くにご近所へのおつかいを頼まれるのは本当に嫌でした。ああ、怖いってことじゃないですよ? 暗くなると困るからって母がランタンを持たせるんですよ。懐中電灯とかじゃなくてランタン。わかります? こう重たい野菜を持たされランタンまで持たされ……嫌でしょう? まあ、帰りはランタンだけで済みますけど、時々ね、お返しにって果物を渡されたんですよ。うちは4人家族だから、最低でもよっつは果物を持たされるわけです。果物もモノによっては重いですからね。さすがにスイカをまるまる一個渡された時には、帰りに川に捨てました。  それでね、あ、刑事さん。魚を捌いたことはあります? ない? まあ、そういうもんなんでしょうね。
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