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「すみれがいつも心配してるんです、千佳さんの自虐癖。いつも自分をふわっと貶めて、笑いにしようとする」
「え」
「千佳さんのそういうところ、ぼくは楽しくて好きですけど。ぼくを相手に、そんな気づかいは不要です」
「う? うう、ん……あまりそんなこと、考えたことないんだけど……」
「考えてみてください。千佳さん、素敵な人なんですから。ちょっとだけ、言葉を控えめにするだけです」
「でも、自分からしゃべらないと男の人も乗ってきてくれないじゃない……?」
無意識の中で当たり前に思っていたはずなのに、天川くんに言いながら胸のあたりがひんやりする気がした。
「最近ジェンダー論がどうのってみんなうるさくしますけど。ぼくは、女性が退屈しないよう努めるのが男の役割のひとつだと思ってるんですけどね。女性のほうから気をつかわないと話もできないやつなんて、相手にする必要ないですよ」
「……天川くん、あなたほんといいやつだよねえ」
「いえ、そんなことは」
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