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相手が子どもとはいえ、礼のひとつも尽くせないようでは30代がすたる……と思い、手土産に少しいいお店のシュークリームを持っていった。
だがシュークリームを渡した瞬間、光くんは少し不満げにぼやいた。
「ここのシュークリームなら、期間限定の早摘み苺フレーバー食べたかったなー」
顔だけ見ていると、記憶の中の斉木守のミニチュア版と言っても過言ではない光くん。あたしと斉木守はくだらない言い合いをする仲だったので、おとなげなくカチンと来てしまった。
「ごめんねー、気が利かなくて」
「ホントだよ。フツー人へのプレゼントって、そのお店でイチバン価値のあるもの選ぶじゃん。オレが中学生だからってナメてるよねー」
口さがない思春期男子に、さすがにめぐみの顔色が変わる。
「光! よそさまからなにかいただいたら、真っ先に喜んでお礼を言いなさいってあれほど……」
「チカには気を遣わなくても大丈夫って、かーちゃんが」
「い、いいのいいのー。非常識なことお願いしに来てるのはこっちだし」
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