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光くんの顔は斉木守そのものだが、そのたたずまいには若干の違和感があり、ふしぎな気持ちになった。
「こっち。ゆっくりして」
めぐみに案内され、リビングに通される。この家に来るのは、光くんが産まれたとき以来だろうか。坂田も含めて、斉木守をよく知る同級生で揃って訪ねたときだ。
「で、オレになんの用。チカおねーさん」
「あ、ええと……そうね。学校はどんな感じ?」
「どうでもいい前置きはいいよ。勉強したいから早く済ませたい」
「光! 大人にはちゃんとした言葉遣いをなさい!!」
めぐみが見たこともないような鬼の形相になる。光くんはやれやれとため息をつき、シュークリームの箱を抱えたままあたしの正面にペタリと座った。
彼の態度を別段失礼だとは思わなかった。いまのいままで忘れていたが、あたしだって子どもの頃、大人の話に付き合わされるのが迷惑だったことを思い出したのだ。
「正直に話すんだけど」
「そうしてくれると嬉しいデス」
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