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しばらく、女同士でとりとめない話をした。
近頃は肌の色つやは手入れをしてあげないと保てないこと、代わりに精神が安定してきたこと、自分の好き嫌いに正直になれてきたこと。少し気心が知れた間柄なら、なにげなく口にすることなんかを。
陽香さんは、返しもしやすい話の投げかけをする人で、専業主婦と聞いていたが、意識を外側に向けて持っている人だと思った。
意外だと思った瞬間、恥ずかしくなった。少し考えればわかることで、彼女だって人格も心もある人間なのだ。
“坂田仁志の妻”という存在に強烈な拒否反応を示していたのは、完全にあたしの勝手だった。
間に入ってくれたのが中学生男子というのをいいことに、このままなんでもない話ばかりでお茶を濁して帰ってしまおうかとずるいことを考えた。
他人から呼びつけられたわりになにも言われなかったなんて不思議な日は、だれにでもたまにあることだ。
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