命長ければ恥多し

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   なじみのない石畳を駅に向かって歩きながら、下がってきたマフラーをクイッと持ち上げる。  家から出る前に少しだけつけてきたフレグランスがマフラーの中でかすかに香って、だれのためでもなかったのに癒された。  ゆるやかな人並みに混じりながら、信号待ちでスマホではなく灰白色のような真冬の空を眺める。いままで、自分だけの欲望のためにどれほど時間を費やしてきてしまったのだろうと、落ち込むでもなく思った。  恋も、スタイルも、生活も──目まぐるしい人や時間の中でもまれながら、なにを持てばバカにされないか、なにをしていれば格好がつくのか。  あたしはそんなことにばかり気を使ってきてしまったような気がする。  自分の恋がうまくいかないのは相手のせいにして、古い恋にしがみつくことで一途さを演出しながら、どれほどその頑なさに巻き込み、見ないようにしてきたものがあっただろうか。 .
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