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「ど、どうしたの。その顔」
「昨夜眠れなくて」
「なんで」
「エノモトサン」
そのままテーブルに突っ伏す行儀の悪さに、また驚いた。
坂田という男は、いつも背筋をしゃんと伸ばしているものだ。それがいっそう王子様感を出すのに一役買っていた。
「ど、どういうことなの」
同級生のよしみで、丸くなった坂田の背を無造作に撫でた。
「ひとばんじゅうスマホブルブルさせるんだ、あのひと」
「ぶっ」
明らかに頭の回っていない坂田の声に笑ってしまった。
「笑いごとじゃないよ。今日は同級生として、かっこよく体面を保つつもりだったのに……」
「はいはい。坂田はいつもかっこいいよ。今日は疲れてだいぶ老けて見えるけど」
「出てくるとき、息子にも言われた……どアップで写真撮られて、そのまま斉木のとこの光に送られてさ。最悪だよ」
「ぶふっ、かわいいイタズラじゃない」
写真を見てニヤリと口角だけを上げて笑う光くんを想像し、そっちに笑ってしまった。
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