命長ければ恥多し

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   相手のことを考えるだなんて、あたしは今までしたことがなかったのかも知れない。  それができたのは坂田仁志を好きになったから──なんて、あたしにしては上出来だ。 「ね、坂田。なに飲む? まだ買ってなかったよね。たまにはあたしがおご──」  親友なんて無理でも、友達としてまずは第一歩……と思ったときだった。 「やっと追いついたと思ったら、どうしてこの人といっしょなんです」  ぞ わ 。  だれになにを言われたのか、そんなのは些末だと思ってしまうほど、冷たく恨みを帯びた声が頭の上から落ちてきた。  ぜったい、振り向きたくないんですけど。 「……しつこいね、あなたも」  さっき笑って話してたなんて嘘のような、坂田のさめた声。  この声があたしに向けられたものでなくてほんとうによかったと思うと同時に、さっき言われた通り自分はまだ常識的な態度で坂田と接することができていたんだ、と違う角度から納得できた。  ちゃんと褒めてくれてありがと、坂田。 .
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