命長ければ恥多し

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  「あなたが私の前に現れたから……だから……!」  氷で心臓を下からなぞられたような悪寒が走った。  一見ドラマティックな言葉なのだろう。ドラマや映画でその言葉が出てきたのならば。  だがここはロマンの欠片を見つけるのも大変な現実社会で、坂田はその気のない妻帯者だ。  そしてエノモトサンは高校生の娘を持つママ。そうそうロマンスなど描ける立場でも関係でもない……と思うのだが。  なんて、なんて思い込みの激しい女性だろう。  がんばって周囲の様子を伺うと、フロア内のほとんどの人からの好奇の視線を集めてしまっていることがわかった。あたしと坂田のせいじゃない。エノモトさんの大きな声のせいだ。 「あ……あの、あたし、席を外しても……」 「悪い。長倉はここにいて」 「う……」  長年の恋心に免じて逃がしてくれよ、坂田。 「私を蚊帳の外にしないで!!」 「えっ」  背後のエノモトさんに急に両肩をつかまれ驚いた。 .
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