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そうだ、この男は家庭での身の置き場がわからないからと、エノモトさんで癒されていたのではないのか。エノモトさん自身の思い込みの激しさはもちろんあるだろうが、ここまで誤解されても仕方のない態度だったのではないのか。
「会っているとき、私を見て、微笑んでくれてたじゃないですか……」
なおもすがろうとするエノモトさんに、坂田は「正直に言いたくなかったんですが」とため息をつく。
疲れた坂田は伏し目がちにテーブルに肘をつき、あたし、エノモトさんの順でゆっくり視線を流した。
「僕を真っすぐ見るあなたの目が、出会ったころの妻のようで、懐かしく思い自慰に耽っていただけです」
「──……っっっ」
かっと、一瞬で喉が渇いた。
まさかほんとうにその行為のことを言っているわけではないにしろ、そんな低くて色っぽい、いい声でしっとり言われたら。
ほかの女が入るすきまなんて、そりゃあないでしょうねえええええ。
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