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風は冷たいが、午後のふわりとした陽光が街を明るく見せている。なんとなく冬の終わりを肌で感じていると、隣の坂田が小さく笑い出した。
「我ながら白々しいセリフだとは思ったけど、エノモトさん、呆気に取られてくれた」
「悪い人だよ、坂田ってば」
「そうかな。でもああいうのって本人が納得してくれないと解決しないから」
「ああ……そうだね。本気でタチが悪いと警察沙汰になっちゃうし」
「そう。大事な生徒さんの親御さんだから、さすがにね」
「大事な生徒さんの親御さんを誤解させて、暇つぶしをするのはどうかと思うよ」
「理解してる人だと思ったんだけど、それはほんとうに反省してる。もうしない」
ほんとだろうかと疑う気持ちはあるが、坂田はあたしの男ではないので、そこには口をつぐむことにした。
「……ほんとに反省しなよね。坂田は、女のタガを外す男なんだから」
「え? どういうこと?」
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