423人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
「さすが長倉。学校ってさ、基本的に代わり映えしない空間だから。同世代のサラリーマンと会うと、みんなそこそこ人間が練れててハッとする。反動で自分はガキだなって思うことけっこう多いんだ」
「そうなの?」
「うん。俺は大学生気分が抜けてないのかな、って思う」
心なしかしょんぼりした様子の坂田を見て、なんとなく腑に落ちた。この男は、忙しいくせに同窓会などには進んで顔を出す。たぶんだけど、自分の立ち位置が気になるんだ。
『一応、彼の顔色はちゃんと見てるんですよ。……だから、しばらくそのことはナイショにしておいてくださいね』
陽香さんの、ちょっと悪い面を思い出した。これは今こそ女同士の秘密に操を立て、友人として正しい援護射撃をするべきなのではなかろうか。
「そういうの、奥さんと話したら?」
「え? どうして」
「結婚相手って、いちばん相手に理解がある存在なんじゃないかっていう一般論。坂田が何か不安なら、奥さんが力になってくれるでしょ」
「……」
.
最初のコメントを投稿しよう!