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30を過ぎた女たるもの、恋を自覚したからといってなにか変わるものではない。
……なんて、かっこつけすぎか。変わるすべなどありはしない、が正しいのかも知れない。
昼休憩を近くのサンドイッチ屋さんで軽く済ませ、どんどん圧力を増していく太陽の光から逃れるように本屋にすべり込んだ。会社のとなりのビルの1階に構えるこの本屋には、用もなくよく立ち寄る。もっとも今日の場合、目的がなかったわけではないが。
あれからはるやは、好きになってしまったというオンナさんの話をぽろぽろとあたしにこぼすようになった。
少女小説家、胡桃花音。
あたしも最近までよく知らなかったが、ジュニア小説家のほとんどがそうであるように、胡桃花音はメディアに顔出しをしていない。
どんなオンナさんなのか顔くらい見てやりたいのだが、ネットで調べても学生時代のアルバム写真の1枚すら流出していなかった。
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