423人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
あたしにできる胡桃花音の身辺調査は、本屋に並んでいる彼女の著書を眺めることくらいしかないらしい。
少女向けのジュニア小説の棚の前なんて、何年ぶりに来ただろう。もっともあたしは熱心な読者というわけではなく、学生時代のグループのだれかしらが小説やアニメを好んでいたので、つき合ってぼんやり眺めていた程度だったけれど。
胡桃花音がどのレーベルにいるのかネットで見た気がするけれど、あたしは顔を見たかっただけなので頭に残っていなかった。我ながら、つくづく浅い女だ。
水色やピンクの背表紙、著者名のあたりを1冊1冊注意深く見ていく。あたしは間違いさがしを上手にできないタイプなので、見落とさないように。
──と思ったら、そんなのは杞憂だった。
おそらくいちばん本棚を占有しているレーベルのわりと最初のほうに、胡桃花音の名は20冊ほど連続して置かれていた。
「……え。これって、売れっ子ってことじゃん」
思わず声に出してしまった。
.
最初のコメントを投稿しよう!