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「こ、これは違うの、あの。ちょっとした、知り合いの知り合いというか……」
上手な言葉が出てこなくて、かぶるべきOLのガワもかぶれなくて、支離滅裂だ。
「知り合いって、もしかしてレーヤさん絡みですか?」
「……夏菜子に隠してもしょうがないか。そうだよ、レーヤ絡み」
溜め息まじりに肩を落とすと、夏菜子は「ふうん」とつまらなさそうな相槌を打ち、あたしの手から少女小説を抜き取った。
「レーヤさん、惚れっぽいんですよね。ややこしそうな女の人にすぐハマるっていうか」
「ずいぶん詳しいじゃん……」
「あのお店、つくりは広いですけど、人間関係は狭いですから。だれかしらのなにかしらは耳には入ります」
店内には小さく音楽が流れているが、夏菜子の手の中でぱらら……と本がめくられていく小さな音が耳につく。
「長倉先輩も、ご本人から聞いてるんじゃないですか。レーヤさん、けっこうしゃべるから」
「まあ……」
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