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夏菜子は皮肉の混じった笑いを漏らした。どうしてよりにもよってこの子にこんなことをこぼしてしまうのかと、自分でも思う。
だがほかにいないのだ。はるやの話を包み隠さずできる相手が。
「スタートダッシュさえすれば人生楽勝だって思ってたのに、どういうことよ。13歳のころから男の気を引いてデートして、寝て、別れて。相手だけ変わるばっかりで繰り返し。それなのにまだあたしはひとり。さすがに疲れる」
ふうと息をついて、夏菜子はあたしと同じようにしゃがむ。真っ黒い瞳が遠慮がちに覗き込んできて、気遣われているのだと感じた。
「たぶんなんですけど」
夏菜子は本をフラフラと揺らしながら、ひかえめに切り出した。
「人間関係で、人が変わっても似たような問題が何度も発生するときは、相手じゃなくて自分に問題があるんだ、って私は考えるようにしています」
「へ……?」
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