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冷たく見つめてくる夏菜子を無視し、好奇心に負け胡桃花音の作品で単発っぽいものを一冊買った。
帰って少女小説を読みふけるか……と妙な覚悟を決めながら取引先に送る請求書の確認をしていると、デスクの上でスマホが震え出す。
確認すれば、はるやだった。
『ちーちゃん、今夜メシ行こ』
なんてことはない、いつも通り彼の手が空いたときの気まぐれな誘い文句だった。
だがあたしにとっては、はるやのあの告白のあとはじめての誘いだ。はるや自身は、あれを告白だとは思っていなさそうだが。
恋愛ごっこって言ってたっけ。はるやにそれを頼んだ人のことが少し恨めしくなる。元出張ホストなんてたくさんいそうなのに。そもそも現役の人に頼んで欲しい。
なぜはるやだったのだろうか。だいたい、恋愛ごっこってなんだ。そんなもの、妄想という名の思考実験だけではだめなんだろうか。
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