第二の人生……とは

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   そう言うと、男は一点の曇りもないさっぱりとした笑顔を見せた。  男もとい、長谷川。こいつの顔はあまり見たくない。営業の中心人物だけあって、人たらし感がものすごい。  昔はあたしもその外づらを長谷川の本当の人格だとうっかり信じてしまったことがある。そのせいで、いつだったかの失恋の深酒のついでに一度だけ寝てしまった。  次の朝、やっちまった……と口止めに行くと、長谷川は素知らぬ顔で寝る前と同じ態度で接してくれたのだ。同期の友情に感謝したのもつかの間、安心してランチに出るとどこから尾けてきていたのか、長谷川は後ろからとつぜん「泣き顔可愛かったよ」と一言だけ言い残して立ち去った。  あれからあたしはこの男が苦手だ。ベッドの中は昼間とは別人のように野性全開だったところも含めて。 「ところで最近楽しそうで寂しそうだよねえ。新しい男でもいるの」 「わけわかんないこと訊かないで。ここは会社なんですけど。資料ありがとうさよなら」 .
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