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「冷たいなあ、せっかく久しぶりにふたりで話す機会できたと思って、喜んで来たのに」
「……ねえ、鳥肌立ちながら一応確認するんだけど。あたしに好かれてるとでも?」
「ううん。むしろ嫌われている予感」
相変わらず一点の曇りもない、さっぱりとした笑顔。
あたしのほかに、長谷川が愉悦系サディストだと気づいている人間はどのくらいいるのだろう。そのうち、寝た人間は何人くらいいるのだろう。長谷川のことだから、男でも女でも機会があれば抱いていそうだ。
「バカなの?」
「ねえねえ長倉知ってる? マイナスにマイナスをかけたら、なんとプラスになるんだよ」
「そのプラスにマイナスをかけたら、ちゃんとマイナスになるって知ってる?」
「わあ、いいテンポで返ってくるう。これだから長倉好き」
「無駄に頭使うから、邪魔しないでくれる?」
忘れないうちに、さっき足りなかったゼロをひとつだけ足した。キーを叩いた音が響いて、それがスイッチになったように長谷川がふと真顔になる。
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