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「やりたい」
すっかり目が据わった様子で、はるやはテーブルの一点を凝視しながら唸るようにつぶやいた。なんであたしの前でそれを言うんだろう。
あたしとはるやはつかず離れずこうして会っているが、彼は例の女性作家とも逢瀬を重ねているらしい。
さすがに食事中はあたしとの会話に集中していたが、部屋に来るなり「買ってきたばかりだからほんの1杯」と開けたスパイス焼酎を炭酸で割りレモンを絞って、すっかり4杯目。
酔うと口がなめらかになるのか、さっきからはるやの口からこぼれるのは胡桃花音の話題ばかりだ。なんでも最近、彼女が不倫経験者だということを知ったらしい。
「はじめて会った瞬間、ワケありな女なのはわかっとってんけど。キズものやって知って冷めるかと思ってんけど。意外に逆やねんなあ……」
「……女の人のこと、そういうふうに言うもんじゃないと思うけど?」
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