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さすがに不倫の経験は坂田との妄想だけでお腹いっぱいだったのでやらかしたことはないが、つき合った男の蓋を開ければフタマタ野郎だったことはある。胡桃花音がそんなにおきれいな生きものでなかったという現実には少し安堵するが、ならばそれはそれで劣等感がわき上がる。
──はるや、そういう俗物でもいいなら、あたしでいいじゃん。
なんて。
「ふうん、言葉の文ってやつやんか。ちーちゃんやから正直にぜんぶ話してるんやで。わかってやぁ」
ぐずるように鼻を鳴らすはるやは子どものようで可愛らしいと思ってしまう。その程度の許容と愛情があたしにあること、お前こそわかれ。
心の中とはいえ、つい言葉が悪くなる。これが嫉妬でなければなんだというのだろう。
目の前の女の気持ちが手に取るようにわかるはずのはるやは、どうしてあたしのそういう機微には鈍いのだろう。
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