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少しのアルコールと心地よいにおいが漂い、ああこれは彼のにおいだと気づいた。このにおいに、心からの安らぎをおぼえるようになってしまっている。
甘えてくる彼に、よけいなこと言いたくない。
好きという気持ちは、つらくてやっかいだ。あたしのような自己中女ですら、はるやの──自分以外のだれかの幸せを願ったりなんてしてしまう。そんなガラじゃないのに。
ふと、胸元ではるやが身じろぎする。
「ごめん、苦しかった?」
「いいや。……ちーちゃんのおっぱい、でっかくてやわらかくて安心する。興奮するけど、気持ちよくて寝そう」
「なに言ってんの、酔っぱらい」
「ちーちゃん振って結婚したやつ、ほんまあほやなあ。こんな女、そうそうおらんで」
ほかに惹かれてる女がいると言う口で、よくそんなこと言うもんだ。嘘かほんとかわからないが、はるやはあたしの胸の上でため息をついた。
「だったら、あたしでいいじゃん」
彼が酔っているのをいいことに、こちらも嘘かほんとかわからない調子で言ってやった。
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