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「それはあかん」
やけにはっきりとした声で言われた。
「なんでよ」
はるやはあたしの胸からひょいと顔を上げ、お酒の余韻はあるものの、真っすぐにこちらを見つめる。
「恋なんてもんは、いつか終わる。必ず終わるもんや。……おれはちーちゃんと終わりたくない。だからあかん」
「ちょっと……どういうこと。じゃあいまはるやが好き好きいってる作家さんは、なんなの」
「限られたもんやから全力投球したいだけ」
「ふつうは、恋が終わらないようにがんばるもんじゃないの?」
それは、坂田への恋心からの叫びだった。坂田に恋人ができても、結婚しても、終わらせないようにしていた。本当に好きで、欲しかったからだ。
はるやは、見たこともないような苦ったらしい皮肉な笑みを浮かべる。
「がんばっても結局、終わったやろ」
見透かすように、はるやはかすれた声で言った。そのまま彼の視線は外れる。
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