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「明るくてやわらかそうな髪とか、声の低さとか……あと、淹れたての紅茶みたいな目の色とか」
「はあー、きれいな言いかたや。よっぽど好きやったんやな」
言っていないことを拾ってくれるところも、とつけ加えたくなったが、初対面の人にそんなことまで言っても重荷になるだけかも知れない、と口をつぐんだ。どれほど似ていたって、彼は坂田ではないのだ。
ドアがノックされ、彼が応対する。戻ってきた彼は、シンプルなシャンパングラスをふたつ持ってきた。
「ここに来るってことは、イケる口やろ。涙で出てったぶんの水分補給や」
「……ありがとう」
淡い金色に弾けるグラスの中身は少しお高そうなシャンパンだとすぐにわかったが、値段を気にするような気持ちは吹き飛んでいた。
「おれ、レーヤ。あんたは?」
「……長倉千佳っていいます」
「ははは、こんなとこで本名言わんでええのに」
「こんなとこって……あの、ここって、どういう場所なんですか?」
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