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「んー、どういう場所なんやろな。適当な節度を保ちつつ、自分を解放していい場所、かな」
自分を解放、と言えば聞き心地の良い言葉だが、さっきのラブシーンを思い出す。いかがわしい場所という印象はぬぐえない。
「……お店?」
「いや。法的にはたぶんグレーな、成人のたまり場」
「あ、あたし、帰ろうかな」
慌てて立ち上がろうとすると、レーヤさんは膝を打って笑った。
「おるだけで捕まるとかはないから、安心して。そうやな、没落貴族が無理にあつらえたパーティ会場みたいなもんと思たらええよ」
「没落貴族がどれくらい健全なのか、あたしにはわかりません」
「世間のみんなはだれも興味を持たん、ってことや。ちょっと落ち着き」
くつくつと笑うレーヤさんは、あたしがごくごくふつうのOLでしかないということまでもうわかっている様子だった。
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