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呼吸をするように褒めてくれるものだから、あたしの全身の毛がかっと開いた。
「……あなた、プロでしょ。ホストなんでしょ! これ、営業でしょ!?」
「いや、ふつうのサラリーマンやで」
「日本に生まれ育ったふつうのサラリーマンが、そんなに簡単に女のこと褒めるわけないじゃない!」
「それはひどい偏見や。よっぽどひどい男ばかり見てきたんやな」
「なっ、おっ、それ、はっ」
剛速球が帰ってきて、見えないその球はたぶんあたしの眉間あたりに直撃したと思う。坂田の影を追いすぎて、男たちの本性はあとからあたしをいいように振り回し、苦しめた。
「確かに……ひどい男ばかりだった……坂田以外はみんな……」
「忘れられへん男の名は坂田、なるほど」
「プライバシーの侵害よ!」
「んなこと言うたって、ちーちゃんが勝手に言うんやもん」
「いちいち脳のメモリーに書き込む必要はないでしょ!」
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