はじまりはいつも恋

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  「だれかと手をつなぐなんて、ひさしぶり」 「え、ほんま?」  思わず口から出た言葉をしっかり聞きつけて、レーヤは小さく笑う。 「手をつなぐの、おれは好きやけどね。女の人がどんな人か知りたいときにやることは、食事に誘うことと、許されれば手をつなぐこと」 「どういうこと? ふつう、話をするんじゃないの?」 「おれの私見というか、経験則。メシの行儀がいい人は夜の行儀もええし、手の感触がなじめば肌もなじむ」 「ぶっ。そんな、覚えたての人が読むハウツー本みたいな……」 「いやいや大事なことやで。こっちが相手をジャッジするんやないねん。自分がその人に合うかどうかを考えるんやから」  思ってもみない視点からの話に、レーヤの顔をじっと見た。 「考えたこともなかった」 「せやろ。だからみんなきれいなほど失敗すんねん。自分を上にして相手を勝手にジャッジしてるつもりやから、あれもこれも気に入らんってなるんや。自分なんかそんなえらい人間ちゃう。そういうことを知ってたら、だいたいの人への態度が丁寧になる。結果、自分が上がる」 .
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