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「なんてエポックメイキング……」
「人間が他人を客観的に見れるようにできてるのは、自分のことを知るためやで。自分がお留守やのに、好きも嫌いも決めれるかいな」
魔法のような話術は、もはやプロの男とかそういう次元ではない。
「ねえ、あなた本当に何者なの?」
「坊主の息子」
「坊主!? お坊さん!?」
「せや」
レーヤは歯を見せてニカッと笑う。
「お坊さんって、俗っぽいことは禁止じゃないの?」
「そんなもん、宗派によるよ。おれは肉も魚も野菜も食う。いまどき、なにもかもアカンなんてとこのほうが少ないんやで」
「へえ……」
「まあ、うちはお堅い家やったから。そういうのいやで、大学行くって名目で逃げてきたんや」
「うわあ……はっきり意思をもって大学行った系か……」
「そう言うってことは、ちーちゃんは目的なかった系か」
「まあね。フツー。親元離れて、彼氏と同棲するためだった」
「ありがちやな」
レーヤの声は、べつにこちらをけなしている感じではなかった。確かにあたしは、生まれたときからありがちな女なのだ。
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