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そんなもしもの妄想を引きずって、十数年。
鮮明なのは坂田への恋心だけで、あとはすべて当たり障りなく曖昧にしてきたんだな、と急に自覚した。
「焼き鳥丼食べたい」
ポツリと口にすると、レーヤは「え?」と笑った。
「炭火で焼いたばかりの焼き鳥ののった、あつあつのごはん。タレたっぷりで、マヨもかけて、冷たいキャベツの千切りが乗っかってる、なんちゃってヘルシーなやつ」
「うわ。ひどいことする。そんな説明されたらおれも腹が……」
立ち止まったレーヤのお腹から、ギュルルルンと盛大な音がした。
「近くにある? そういうの出してくれるお店」
「あるある。ほんまは渋谷でなんかええとこ……と思ってたんやけど、近くにある。連れていくわ」
レーヤは出会ってからいちばん真剣な目をして言うものだから、笑ってしまった。
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