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夏菜子は返事の代わりに少しだけ視線をそらした。
この子の仕草は年下ながら色気があって、あたしには真似できそうにない。男っ気なんてまったくないのに、どこでこんな艶っぽさを身につけてきたのだろうか。
「長い間、秘密にしてきたんですけど」
少し言いづらそうにつま先を見つめたまま、夏菜子はカップを置いた。中身はもう空だ。
「私が出入りしているところ、長倉先輩もいっしょに来ますか。ランクとかレベルとかバカバカしくなるほど、いろんな人が来ますよ」
言ってから、夏菜子はゆっくりあたしの目を見た。いつもの軽い毒舌とは違う緊張が夏菜子の目にはあって、簡単な話ではないとわかった。
「……め、迷惑でないのなら」
あたしのために自分の秘密を明かそうという後輩に、応えなければ女が廃るというものではないか。
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